「消せるボールペン」30年の開発物語
小学館新書から4月1日発売の滝田 誠一郎 『「消せるボールペン」30年の開発物語 (小学館新書)を読了した。
パイロットコーポレーションのヒット商品の「フリクションボール」とその素になったフリクションインクの開発の物語になっている。
前半は、フリクションインクにつながる「メタモカラー」の30年に渡る苦闘の歴史で、本書ではさらりと書いているけれど、アイデアを目に見えるものにして、さらに実用化するための苦労は相当なものだったと思う。
それにしても、熱で色が変化して、それを温度で制御できるインクを発想したところが素晴らしい。その素材に人生をかけた開発者と長年それに係ることを許した企業の懐の深さには脱帽だ。
中盤は、メタモインクをボールペンとして製品化し発売するまでの話で、これもインクを透明にするというアイデアがなければ製品につながらなかったのではないだろうか。
他の消せるボールペンについてもきちんと整理されている。途中で裁判が取り下げられた三菱鉛筆の「ファントム」との特許係争についても触れられている。
後半はパイロットコーポレーションの企業についてのルポになっていて、企業の歴史も概観している。
文房具の開発に関する書籍はそれほど多くないので、貴重な資料だと思う。
この本は、Webの小学館 BOOK PEOPLEに滝田氏が連載していた”世界で10億本を売った「消せるボールペン」開発物語 書いた!こすった!消えた!”を加筆したものらしい。この連載は全く知らなかった。
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