とみさわ照仁「無限の本棚 増殖版 手放す時代の蒐集論」
ライター、ゲームプランナー、漫画原作者、古書店主と沢山の肩書を持つとみさわ照仁さんのコレクター人生をまとめた2016年に刊行された「無限の本棚」(株式会社アスペクト)を基に、文庫化にあたって大幅に増補、対談の追加などを行っている「増殖版」という珍しい本だ。
著者は、TBSラジオの「伊集院光とらじおと」で毎週火曜日の「アレコード」のコーナーのゲストにでていたので、変なレコードの蒐集家だと思っていた。
漫画、映画のチラシ、野球のトレーディング・カード、ジッポ・ライター、顔出し看板、ダムカード、中古レコードなどコレクション歴はすごいし、かなりのレベルまで蒐集しているのに、やめ方もすごい。でも辞める理由はきたきつねも同じだったので、よく理解できる。
コレクターだから分かる衝動をきちんと分析しているのは非常に冷静なひとで、本人は「物欲」というよりは「整理欲」がコレクションの原動力というのも個性的だ。
誰かと量や質を競い合うコレクションはつまらないと思うところは同感だ。確かに金にあかしたコレクションはつまらないし、コレクションの金銭的価値だけを誇るのもつまらない。
テレビのお宝鑑定団で贋作の多いところは、金銭的価値だけを追うコレクションの欠点だろう。
著者が行き着いたのがエアーコレクションを集めるエアーコレクターというもはや物を必要としない境地ということだ。エアーコレクションこそが無限の本棚ということになる。
ブックオフでセドリして集めた自分の好みの本を売る「マニタ書房」を古書の本場神田に作ってしまった話は、古書店を開きたい人には参考になるだろう。
きたきつねも色々なものを集めているが、蒐集というのは蒐の字に鬼が隠れているというのを意識したことはなかった。コレクションは鬼の世界で、コレクターの心にも鬼がすんでいたのだ。
もう、きたきちつねもそろそろ終活を考えなければいけない時期に来ていて、エアコレクターを目指し始めていたところだったので、良い本に出会うことができた。
文房具好きはコレクターになりやすい傾向があるので、この本は必読かもしれない。
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