ヘンリー・ペトロスキー「鉛筆と人間」
キャロライン・ウィーバーの「ザ・ペンシル・パーフェクト 文化の象徴”鉛筆”の知られざる物語」を読んでいて、27年前に出版されたヘンリー・ペトロスキーの「鉛筆と人間」のことが出てきたので、書棚から探してきた。
読み直してみると、やはり「ザ・ペンシル・パーフェクト 文化の象徴”鉛筆”の知られざる物語」は「鉛筆と人間」に幅広く依拠しているものだと思う。
「鉛筆と人間」はすでに絶版になっていて古書でしか手に入らないけれど、鉛筆の歴史を記述した書籍としてはこの本に勝るものはないようだ。
この本があまり有名にならなかったのは、邦題の「鉛筆と人間」が良くなかったのではないだろうか。
元の書名はHenry Petroski「THE PENCIL -A Histry of Design and Circumstance」となっていて、「鉛筆と人間」とすると文化史的な印象が強すぎてしまったようだ。
鉛筆の芯の原料であるgraphite(グラファイト)を「黒鉛」ではなく正式に「石墨」と訳しているところが、学術書らしい。
実際、以下に示す目次を見てみると技術的内容が多いことがよく分かる。原本はAmazon.comでKindle版が手に入る。
著者のヘンリー・ペトロスキーはアメリカのデューク大学の工学部教授なので技術的視点で記述していると思われるが邦題が鉛筆と人間」になったのは、翻訳者の渡辺潤さんと岡田朋之さんが社会学系の研究者ということなので、どうしても人との関係を見たということなのだろう。
目次
1 忘れられた道具
2 「鉛の筆」の謎
3 鉛筆前史
4 木製鉛筆の登場
5 イギリスの石墨発見
6 現在の鉛筆はフランスでつくられた
7 ドイツの鉛筆職人
8 アメリカの鉛筆開拓者
9 森の職人H・D・ソロー
10 ロンドン万博で行われた実験
11 ドイツのブランド合戦
12 アメリカ初の鉛筆工場
13 世界鉛筆戦争
14 芯を支える木
15 技術者が心のなかで描くもの
16 折れない芯
17 鉛筆削りとシャープペンシル
18 レーニンが認めた米国のビジネスマン
19 競争、恐慌、そして戦争
20 鉛筆先進国と後進国
21 完ぺきな鉛筆
22 どこにでもあるモノの物語
付録(コ・イ・ノール鉛筆会社の「鉛筆製造法」より;鉛筆のコレクション)
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