国産のガス加圧式油性ボールペンについての覚書
ガス加圧式油性ボールペンは、アメリカのフィッシャー(Fisher Space Pen Company )がNASAに向けて作ったガス加圧式油性ボールペン「スペースペン」が最初に作られたものだろう。
ガス加圧式油性ボールペンは、需要の多い宇宙での利用をではなく、当時XYプロッターのペンとしての需要があったので作られたのではないだろうか。
きたきつねの45年くらい昔にいた職場にフィシャーのスペースペンのリフィルを使ったペンプロッターがあって、図を描くだけでなく、文字も書くのを驚いて見ていたことがある。
その時に、プロッターの変化する動きに合わせて一定の太さ、濃度の線を描くためには普通のボールペンでは不可能で加圧が必要なのはよく分かった。
日本では、三菱鉛筆がプロッター用のペンとして国産化に取り組んでいて、実用化に成功していた。
そのガス加圧式油性ボールペン技術を使って筆記具へ展開を図ったのだろうと思っている。
プロッター用のペンは一般的な筆記具とは違った特殊な形状なので、筆記具にするには無理があったのだろう。
また、金属軸をつかったリフィルではコストも高く、普及を図るためにより安い軸の開発に取り組んだと思われる。
三菱鉛筆から1971年にプラスチック軸のボールペンの最大の欠点であるペン先にインクが溜まるボテがでないという謳い文句でガス加圧式油性ボールペンの「エアーペン ノンボテ」を発売している。
軸のプラスチックに気体を透過し難い素材を使っていたようだ。
きたきつねもすぐ買って使ってみたけれど、ボテは止まらないし圧力が維持できず抜けてしまうという問題があって、すぐに廃番になってしまった。
同時期にプラチナ万年筆もガス加圧式油性ボールペンを作って発売したように記憶しているけれど、確認できないので記憶違いかもしれない。現在はフィッシャーのスペースペンのリフィルを使った「プレシャライズド」を販売している。
その後三菱鉛筆からステンレスチップの「エアペンAP-106」、1982年に宇宙でも使えるボールペンとして「スペースラブ」などが出たらしいけれど、何故かきたきつねは使った記憶がない。
その後、2001年3気圧の空気を封入した金属軸のリフィルを使ったパワータンク、2002年にプラスチック軸のリフィルを使ったキャップ式の「パワータンク スタンダード」とストラップの付いたた「パワータンク プレイヤーズ 」、2004年に現行の「パワータンク スタンダード ノック式」と続いている。
現在のパワータンクスタンダードの替芯は、ボールにスパイクを付けるなど改良を加えている。
2003年にトンボ鉛筆がガス加圧式油性ボールペン「トンボデザインコレクションXPA」を発売した。きたきつねはこのボールペンは全く知らなかった。
リフィルは4Cと同じ外形上のもので、内部にガスを封入しているけれど、ペンチップの構造がよくなかったのかインクが漏れる問題があったようで、内部の圧力を下げる対応をしたらしい。2011年に廃番になってしまっている。
三菱鉛筆以外の国産筆記具メーカーは単純にリフィルに圧力をかけるだけでの加圧式油性ボールペンをアウトドア用としたデザインの製品を販売している。
現在ガス加圧式油性ボールペンを製造しているのは三菱鉛筆のみということになる。
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コメント
narkejpさん
読んでいただきありがとうございます。
この覚書は「パワータンクの戦略の間違い」というテーマで書き始めたのですが、三菱鉛筆にいくら提案しても意味が無いので歴史として書き直しました。
技術は一流なんですけれど、企画力がないのか企業としてのシステムが悪いのか残念なところです。
投稿: きたきつね | 2020年10月17日 (土) 16時14分
パワータンクの前史、興味深く読みました。良い製品だけに、良さを活かす工夫が不足なのか、コスト対策が勝ってしまうのか、残念です。最近の利用度合いは、トップグループに入ります。パワータンク・スマートが多いです。
投稿: narkejp | 2020年10月17日 (土) 05時30分