「石油の呪縛」と人類
読み始めたときは、こなれていないというかきたきつねが訳したような文章で、読みにくかったけれど、読後の感想は「この本『「石油の呪縛」と人類』を読んで良かった」だった。
石油とそれを巡る歴史から、石油が欲望と結びついていく過程がよく分かった。
石油資本が、全米の市街電車を絶滅に追い込み、自動車を選ばざるを得なくしたり、世界の民族紛争と呼ばれるものや、局地的な戦争の背景に石油が絡んでいたり、際限のない石油資本の銭ゲバぶりがおそろしい。
オイルマンのブッシュ大統領とその取り巻き達も石油の呪縛の中にいて、イラク侵略戦争も裏には石油が絡んでいることもよくわかる。ライス国務長官が、石油会社のシェブロンの重役だったというのも、暗示的だ。
いかに石油が私たちの暮らしている世界を支配しているかがよく分かる。背筋が寒くなってくる。今、トウモロコシでバイオエタノールが作られているが、一見地球に優しい(非常に嫌いな言葉だけれど)ようだけれど、石油を大量に消費して作られていることにだれも思い至らないことを見てもわかるだろう。
日本の農業の石油依存度は99%になっている。石油がなければ自給率40%すら維持できないということだ。肥料、農薬、トラクター、資材は全て石油で作られ、動いている。
「エネルギー効率の良い新技術はそれによって生産量が増加するので、かえってエネルギー大量消費を助長する」というジェボンズのパラドックスに沿って石油が大量に消費される構造ができあがってしまっている。
石油や石炭は無限にあるわけもなく、有るからといって使えば使うほど、地球の環境はヒトの生存を許さなくなってしまうことを自覚しなければいけない。
経済成長が無い世界は、恐ろしい世界になるのか、明治や江戸時代の暮らしは生命の危機なのか、よく考えてみたい。
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