飢餓国家ニッポン―食料自給率40%で生き残れるのか
昨日発売の週刊文春4月16日号を読んでいたら、『元農水官僚が告発した日本「食糧危機」の大ウソ』という記事が載っていて、のけぞってしまった。
元農水官僚というのが東大大学院の川島博之準教授で、最近出した自著のプロモーションで出てきたようだ。元官僚というけれど、官僚というのは、「官僚(かんりょう、bureaucrat)とは、一般に、国家の政策決定に大きな影響力を持つ公務員をいう。」(Wikipedia「官僚」)だけれど、川島氏は、一時研究公務員だったということで、官僚の経歴はまったく無いはずだ。
川島氏の主張は、「世界の食料は足りている、足りているどころか、余っていることが問題だ」というものだ。昨年の10月にブログで「ト学会が喜びそうな本を見つけた」で書いたように、多角的な情報なしで、まったくいい加減な思い込みで本も書いているようなので、全く読む気が起こらない。
この週刊文春の記事では、丸紅経済研究所の柴田明夫所長の「飢餓国家ニッポン―食料自給率40%で生き残れるのか」や朝日新聞の記事をばっさりと切り捨てている。
つい二日前に「飢餓国家ニッポン―食料自給率40%で生き残れるのか」読み終えたばかりで、ちょっと過激に書いているけれど、川島氏の主張と比べる非常に多角的な分析でとうなずける内容だった。
巻頭に「議論をより明確にするために、あえて危機感を強調するように試みた」とあるように、非常に厳しい表現が随所にあるけれど、現実を考えるとまだまだ甘めに表現されていると感じた。
この本は、リーマンショックの前で石油だけでなく多くのコモディティの価格が高騰していた時期に書かれているけれど、リーマンショック後一次トウモロコシ、大豆などが暴落したけれど、確かに柴田氏の論の通り、値上がり前の水準を超える相場を維持している。
現在の農業水準で生存可能な日本の人口は6000万人という予測は、きたきつねもブログの中で書いてきたけれど、おおよその数字としては妥当だろう。
もっと重要なのは、食糧はあってもそれを買うためのお金が無くなったり、運搬するためのエネルギーが足りなくなった時には、飢餓が発生してもおかしくないことだ。
他に水や肥料の問題もあって、楽観できる状況にない。それよりも国際的に流通している食糧は少なく、現在その少ない食糧を一番買っているのが日本だということも忘れてはいけない。柴田氏がいうように、自国民を飢えさせてまで、国際市場に食糧を出す国はない、あくまでも余剰が国際市場に流通しているに過ぎない。
川島氏の主張によれば、食糧輸入国だったイギリスなどが、第二次大戦後食糧自給率を上げるための努力をしてきたことは無意味ということになり、EUが自給率を下げて食糧輸入国になったら、それでも食糧は余り続けるのだろうか。
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