中谷巌「資本主義はなぜ自壊したのか『日本再生への提言』」
週刊文春5月28日号の阿川佐和子さんの対談「この人に会いたい」で、竹中平蔵氏と共に自民党の新自由主義政策のバックボーンを支えて来た経済学者の中谷巌氏が、でていて、新自由主義の間違いや資本主義のありかたについて語っていた。その中で間違いに気がついて懺悔の本「資本主義はなぜ自壊したのか 『日本』再生への提言」を書いたというので、手に入れて読んでみた。
細切れだったけれど、ようやく読み終えた感想は、これだけちゃんと色々なことがわかっているなら、懺悔する前にどうして最初から新自由主義政策の旗を振ったのかというものだった。そこが不思議なところなのだろう。
歴史、宗教と多岐にわたって資本主義と新自由主義がユダヤ教とキリスト教が生み出したもので、日本的行動原理に合わないかを論証されている。
弱肉強食の新自由主義の社会は、多くの普通の人々にとっては住みづらい社会で、今日が楽しく、昨日も楽しく、明日が楽しみという暮らしからほど遠いものだ。
色々な反省に立って、新自由主義、グローバル資本主義の陰の部分を明確にえぐり、将来あるべき社会への提言を読み取ることができる。しかし、なるほどと思う点も多いけれど、最後に消費税を上げて福祉目的税にするという話は、どこか違っているような気がして、違和感を持って読んだ。
還付付き消費税を提言しているけれど、消費税の逆進性は、いくら還付金を付けても解消できないだろう。富裕層は、多額の消費をするからより多くの消費税を負担することになるという論理もいただけない。
還付付き消費税を提言しているけれど、消費税の逆進性は、いくら還付金を付けても解消できないだろう。富裕層は、多額の消費をするからより多くの消費税を負担することになるという論理もいただけない。人は、頭は一つ、口は一つ、目は二つ、手足は1対、身体は一つと貧乏人も金持ちも同じだから、生活必需品の量は変わらないから、そこでの消費税の逆進性が一番大きく響くのではないだろうか。所得の適正な再配分は、いくら還付税を付けても消費税にはできないことだろう。
所得税を高くすれば富裕層が逃げ出すというのであれば、逃げ出せばいいだろう。その時は、国内での売り上げや資産に対する課税方法を改善すればいいと思う。そういえば、ハリーポッターで大もうけした静山社の松岡代表は課税を逃れてスイスに移住していた。
デンマークやスエーデンの福祉国家ぶりを例にしているけれど、広い国土の500万から900万人くらいの人口の国と、狭い国土に1億2千万人もいる国では条件が全く違う。
中谷氏は、頭でわかって懺悔しつつも、「稼げない人間は負け組であり、それで飢えても自業自得」という新自由主義のパラダイムから脱出に失敗したか、引きずっている。自分の信じてきたことが間違っていたと自分から認めて、証拠となる本を書いてしまうというところが優秀な人は違うものだ。
「小泉・竹中」構造改革は、全て間違いだったかといわれれば、判断が難しいところがある。ただ、大企業と富裕層の思惑通りになってしまったということは疑いはない。「小泉・竹中」構造改革は、アメリカの求めに応じた部分もあったのではとも思ってしまう。
小泉元首相の決断力に引かれていたから、国民は構造改革の結果がどうなるかを考えることなく支持していたというのは、今の麻生内閣をみて感じる。
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