田中優子『未来のための江戸学』
新年の読書始は法政大学教授の田中優子さんの「未来のための江戸学」。田中さんは、石川英輔さんと共著で「大江戸生活体験事情」
、『大江戸ボランティア事情』と江戸時代の生活の合理性について体験も含めて書かれていたので、年末に『未来のための江戸学』を買ってあった。
新書だったけれど、久しぶりに充実した内容の本に出会えたような気がした。
サブタイトルにあるように「この国のカタチをどう作るか」というのが、全体を通したテーマだ。あとがきに、「江戸時代を使って現代と未来を考えることの必要性を書いた本」と書いてあるように、江戸時代の本質から、なぜ江戸時代ができたのか、江戸時代のもつ社会の循環と持続ありかた、日本の未来を作るための方向などがまとめられている。
きたきつねが長年思い続けて、整理がつかずにいたことを、きちんと体系付けて書いてあって、視野の広さと構成力には頭が下がった。
いちばんの肝は、戦国時代から江戸時代に移り、徳川家康がなぜ外から見ると鎖国のような、交易を絞るような外交政策をとるようになったのかという部分だと思う。
以前から、きたきつねは徳川三代の取った省資源、低成長路線について高く評価してきたけれど、その必然性についてはこの本を読んで、理解が足りなかったことがよくわかった。
江戸時代の始まりは「グローバリズム」であり、江戸時代の終も「グローバリズム」だったことがよく理解できた。
資源がなく、自分の食料も外国に頼っている今の日本は、未来に向かって江戸時代にあった価値観や生活思想をしっかりと受け止める必要がある。
いつまでも自動車を売って暮らしていけるのだろうか。
久しぶりにメモを取りながら読書をする本に出会うことができた。
「起きて半畳、寝て一畳、飯を食っても五合半」
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