ポール・ロバーツ「食の終焉」
随分時間がかかったけれど、ポール・ロバーツの「食の終焉」を読み終えた。
アメリカでは、大企業によって牛耳られ持続性が大きく失われた食の現状が詳細に示され、その状況がグローバル化により世界の食にも影響してしていることがわかる。
日本でも、その流れの中なら逃れることができなくなっていることもよく判る。
食システムというのは、生産、加工、流通、消費が含まれているのだけれど、アメリカでは企業の利益のために、政治を動かし規制緩和などを進め、低コストで食を大量生産し、国民の健康を無視した大量消費をしいるシステムになっていることを明らかにしている。
工業製品のような家畜生産の状況は、驚く程だ。規模が巨大になり、抗生物質、ホルモン剤がなければ生産が成り立たなくなっていることがわかる。
さらに、アメリカの余剰穀物を輸出するために発展途上国の伝統的農業を破壊していて、穀物の国際相場をコントロールするために、トウモロコシからエタノールを大量生産することで、穀物価格を上昇させることで、飢餓を生み出している。
食料の自給率が低い日本では、まだ食料を買うことができるが、いつまでも続けることができるのだろう。
食システムには、非常に多くのエネルギーが必要で、それは安い石油エネルギーによって支えられてきた。だけれど、その基幹となる石油エネルギーに持続性はない。この本が出版されたときには、シェールガスがの話はでていなかったが、シェールガスも持続的というわけではない。いつまでも安いエネルギーが使える保障はない。
作者は、食は工業製品と違い、食べないという選択はないから、持続的ではなくてはならないという立場で、日本の言葉でいうところの地産地消が必須であるという。
全体として、きたきつねが昔から主張してきたことと齟齬は全くなかったのは、うれしい。
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コメント
きたきつねさん、
仕事を忘れ、しばし考え込んでしまいました。
毎晩のアルコールが一番、地産地消と程遠いものでしょうが、
せめて料理をアジア内に絞って作ろうかと、、
もっともインドまで含めれば、ほとんどの料理ができます。
足りないのは、近くの養鶏業が無くなったくらいか??
投稿: かんてつ | 2013/09/03 16:18
かんてつさん
養鶏場は巨大化して、街にはなくなりました。
きたきつねは学生の頃ブロイラーを使った実験をしていましたが、当時、ブロイラーは8週で2kgにして出荷していました。エサの必要量は、体重1kg当たり2kgでした。
今は、品種改良が進み7週で3.5kgで出荷です。エサの量も体重当たり1割くらい少なくなっています。
豚は、3.5kg、牛は11kgくらいですから、非常に効率が良い家畜です。
発展途上国で肉として生産効率の良いブロイラーに人気が集まっています。
投稿: きたきつね | 2013/09/03 22:57