東大の論文捏造問題
昨年起こった東京大学の分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループの論文捏造問題は、東大の調査の中間報告が26日に出された。51論文が、架空の実験の画像が合成されるなどの不正があったということだ。
それを受けて日本分子生物学会は、「該当論文の不正箇所における具体的な問題点の言及がなく、研究成果についての学術的な検証や評価もないことから、残念ながら科学界および一般社会に対して十分な説明責任を果たしたものではないと言わざるをえない」という声明をだしている。
1年以上もかかってこの程度の報告で、まだ最終報告に1年かかるというのはどうかと思う。
有名教授が、潤沢な資金を得てポスドクを大人数雇って研究グループを運営するには、次々と成果を出して資金を得るという自転車操業になり、そこに無理がでてくる。
捏造でも成果が出ると、グループリーダーの教授は、引っ張りだこになり、教授室だけでなくラボに顔をだすことが少なくなり、サブリーダーに指示をだすことになる。
そうなると、サブリーダーは昇進や保身のために、リーダーから出された仮説や指示を実現しようと努力して結果を出そうとする。でもそれほど簡単に画期的な成果は出る訳も無いので、実験結果の捏造や特殊な条件での結果だけをリーダーに報告する。
そうすると、リーダーは自分の仮説が検証されたと喜んで、論文を発表し、さらに名声はあがり資金を得ることができる。不正が発覚するまで、この悪循環が延々と続くのだ。
これは、加藤茂明元教授だけの問題ではなく、怪しいと思われている研究グループはもっと多くあるのではないだろうか。ボスがポスドクに無理な仮説で成果を要求するだけでなく、成果を捏造しろと圧力をかけているといった風の噂があるようだ。
iPS細胞の森口尚史元特任研究員の論文不正はまだまだ小物で、グループが大きくなればなるほど、ポスドクや補助員の雇用が多くなり、簡単に解雇できなくなるから、大規模な研究グループでは起きがちな問題のような気がする。
| 固定リンク
コメント