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2021/08/02

黒沢令子、江田真毅:時間軸で探る日本の鳥 復元生態学の礎

鳥と書いてあると直ぐに反応する悪い癖で面白そうな書名だったので読んでみることにした。

これまでの鳥関係の書籍では生態とか分類に関係するものが多く、民俗学的なものもあるけれど自然科学系の切り口ではなく社会科学系に偏ったりしているるような気がしていた。
本書は日本列島における鳥類の歴史と未来を古生物学、分子生物学、考古学、民俗学、鳥類学、保全生態学から多角的に読み取る方法もあることを知るための入門書のようだ。

まごぎつねが一時恐竜が大好きで博物館の化石を見に付き合っていて、鳥の化石も見ることがあったけれど、始祖鳥とか羽の痕跡とか程度でしかなかった。

ところが日本国内でも鳥の化石が意外なほど多く産出していて、その研究が行われているとは知らなかった。

日本産野鳥の目録は改訂作業が進んでいるようだけれど、世界的に遺伝情報による分類の変更が進んでいてIOCと日本鳥学会の目録の違いが気になっている。

遺伝情報からみた日本産鳥類の歴史は興味深かった。本書とは関係ないが、日本鳥学会は科学の世界で自縄自縛の状態のようだから、実務的なバードウォッチング向けの鳥類目録が必要なのかもしれない

考古学では、各地の遺跡から出土する遺物の中に鳥の骨や鳥を形どった土器などが含まれていて、その中から鳥の種類や鶏の渡来の時期などを遺伝子解析などの分子生物学的手法で解明する話は興味深かった。

特にアホウドリが食用にされていてそれも現在では渡りのコースではない日本海側で出土することや、アホウドリとセンカクアホウドリが種が違っていることが考古学のなかからでてきたなどという話題には驚いてしまった。

博物館や美術館に行ったときにも絵画や工芸品などの展示物の中の鳥を見るバードウォッチングを良くしていて、日本産以外の鳥も沢山見られていて分からないものも多かった

絵画資料や文献から江戸時代の鳥の情報を調べることや文献に現れる鶴の同定などを読んでみると博物館バードウォッチングが一段と楽しくなりそうだ。

保全生態学からの野鳥のおかれている現状と未来、それへの対応が述べられているが、調査は

特に保全に関しては、人が関与できるのは自然の中の一部でしかなく生態系はあまりにも複雑過ぎて、日頃現場で見ていると難し過ぎて、傍観するしかないような気がしている。

バードウォッチャーとしては日頃気にはなっているけれど、といってなかなか近づくことのない話が多かったけれど、知らないことが多く目からウロコが落ちてきた。

残り時間が少なくなって来ているので、食わず嫌いはやめてもっと貪欲にいかなければ。

書名 時間軸で探る日本の鳥ー復元生態学の礎
編者 黒沢令子、江田真毅
発行 築地書館 (2021/3/14初版)

目次
前書き
1 骨や遺伝子から探る日本の鳥
第1章 化石が語る、かっての日本の鳥類相ー太古のバードウォッチング
第2章 遺伝情報から俯瞰する日本産鳥類の歴史
第3章 考古遺物から探る完新世の日本の鳥類
2 文化資料から探る日本の鳥
第4章 絵画資料から探る江戸時代の鳥類ー堀田正敦「観文禽譜」を例に
第5章 文献史料から鳥類の歴史を調べるー鶴同定の分布の事例
3 人と鳥類の共存に向けて
第6章 全国的な野外調査でみる日本の鳥類の今
第7章 人間活動が鳥類に及ぼす間接的影響から今後の鳥類相を考える
あとがき
索引

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