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2022/11/21

川幡穂高「気候変動と「日本人」20万年史」

20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスがアフリカを離れ日本に到達して現在に至ったのかを、古気候学、古環境学、分子人類学、考古学の最近の研究成果をもとに解明しようと試みている。

ホモ・サピエンスの移動と文明の変化は、大規模な火山噴火、隕石の落下などよる大きな気候の変動によってもたらされたという仮説は説得力がある。

大きな寒冷化などの極端な気候変動は、食料をベースとする社会の大きな変化を促すということだ。

現在の日本人に至る移動プロセスを分子人類学で示しているところも興味深い。今年のノーベル賞の生理・医学賞は4万年前の骨から遺伝子を抽出し、人類の歴史を解明する緒をつけたスウェーデンの科学者スバンテ・ペーボ博士が受賞したけれど、まさに本書の古代DNA研究の基礎となっていて本書も、この研究の成果がなければ書けなかったのではないだろうか。

それにしてもダイナミックな内容で読んでいて楽しかった。

現在問題となっている温暖化は、過去を振り返ってみると人類にとってプラスになると考えても良いような気がするけれど、以前の時代と人口や自然破壊の程度が全く違うので、逆に人類滅亡に繋がりそうで危機状態になって

最近読み始めて、読み始めなければ良かったと反省している三浦佑之の「出雲神話論」と比べると、科学的な証拠を積み重ねることのできない、記紀などの書物をベースにした研究の困難さを感ぜずにはいられないし、対象的だと思う。

文字のない時代の神話を記録した古事記や日本書紀の内容がどれほど正しいのか、記録されたものが時代を越えて書き写され伝わっているわけで、編纂した者によって恣意的に記述されていたり、その過程で改変されているかもしれないものを細かく読み解くことは本当にできるのだろうかと思ってしまう。

理科系の人間にとって、証拠が少なく、信頼性が証明できない、関わった人の意識などが記録できない曖昧なものを読み解く仕事は無理があるような気がしてならない。

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