坂上暁仁:神田ごくら町職人ばなし(一)
きたきつねは昔職人に憧れていて、成れなかったけれど職人の話は好きで、本やテレビにモノづくりが扱われていると見てしまう。
漫画「神田ごくら町職人ばなし」は雑誌連載は知らなかったけれど、ひょんなことから見つけて入手した。人気で増刷が続いているようだ。
江戸の町を舞台に桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官の五つの仕事を扱っていて、黙々と手を動かしものを作る職人の姿を描いている。
畳刺し以外は全て女性の職人が主人公という、江戸時代を背景とすればちょっと珍しいのかなという印象があるけれど、仕事への向き合う真摯な姿勢が描かれている。
ストーリーは見どころがしっかりあるのはもちろん、それ以上に職人の扱うそれぞれの仕事のプロセスがきちんと描かれているのも嬉しい。
職人を扱った漫画としては三十年近く前に村野守美「職人尽百景」三巻があるけれど、「神田ごくら町職人ばなし」劇画調の職人の厳しさを表現しているが、こちらはコミック風で人情話になっている。
きたきつねの手仕事の職人が好きなのは、DNAなのかもしれない。
きたきつねの母方の祖父は大工の棟梁で、その祖先は明治維新前は東北の某藩の武士だったのに、宮大工になったということを聞いたことがあって、その遺伝なのか母親は手先が器用で、もの作りが得意だった。
きたきつねは、こどもの頃から母親に似て手先が器用だったので、もの作りが好きで、仕事にも活かせたし、今でも細々と修理や工作をしている。
こどもの頃は職人に憧れていたが、思い通りにはいかず仕事につくことになった。それでも、就職したての頃職場で水路の模型を作る現場の手伝いに駆り出されたことがあった。
床のベニア板に釘を金槌で打つ単純作業でトントンと釘を打っていたら、作業を受注して統括していた指物大工の棟梁が横に来て「あんちゃん、筋が良いね。おれんとこに来ないか」といわれた。
さらにおまけで隣で釘を打っていた先輩に「あんちゃん、床が駄目になるからあっちに行ってろ」といわれて現場から追い出した。
もちろん就職したばかりだったので断ったけれど、内心は非常に嬉しくて飛び上がらんばかりだった。
体に流れている大工の血というかDNAを証明されたような気持ちになったのは間違いない。
最近はFacebookで中国人の山白が伝統的な手作業で紙、布、藍染、印泥などを作る動画をよく見ている。
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