鵜飼秀徳:絶滅する「墓」 日本の知られざる弔い
「絶滅する『墓』 日本の知られざる弔い」を最近の墓じまいや墓マンションの話かと思いタイトルで買ってしまったけれど、読み始めてしまってから日本の葬送と墓の歴史の話ということが分かったという面目無いことになった。
以前も鈴木理生の「江戸の町は骨だらけ」や歴史民俗博物館の葬送の展示などについて記事を書いていて、葬儀やお墓に興味がないわけでないので、興味深く読了した。
著者は京都の嵯峨嵐山にあるお寺の住職で、お墓に興味を持ち葬送とお墓の歴史と日本各地のお墓について調べた成果をまとめている。
これから多死の時代を迎えるだろうから、旧来の埋葬をどこまで続けることができるか、故郷を遠く離れてしまい実家の扱い、散骨・樹木葬といった多様な埋葬方法など話題は多い。
知っていることも多かったけれど、葬送とお墓について分かりやすく整理されていて、寺の年平均葬儀数は檀家の6%位ということや、魂と肉体を分けて埋葬する「両墓制」が近年崩壊しつつあるとか、庶民が墓を使うようになったのは江戸時代からとか、土葬がムスリムの増加で近年増加しているといった色々と面白い情報を知ることができた。
土葬について、西日本が多いように書かれているけれど、東日本でもまだ行われていることが抜けている。
きたきつねが良く行く公園の近くの地元の墓地には土葬墓が沢山ある。
写真の土葬墓は、埋葬した場所の目印に花立てが置かれている。別の場所には卒塔婆や柱が立ててあるところもあって、中に令和5年と書かれた柱があるので、ごく最近埋葬されている。
土葬については、土葬が許されず皆火葬しなければいけないと思っているひとが多いけれど、土葬は可能で実際地域によっては土葬が行われている。
鳥友のある名刹の住職は、地区によっては老人が土葬を希望するというか切望するところがあると話していた。
地元の少し年上の鳥友は、若い頃に土葬の穴を掘ったことがあると話していた。
土葬ではないけれど沖縄の亀甲墓では、墓に遺体を安置して、骨になってから、それを洗い厨子甕に収める場所もあることをこの本にも書かれてる。
最近の話では、北海道札幌市でビル型納骨堂を運営する宗教法人が倒産して、建物が競売され遺骨の引取を求められた遺族が困っているという事件があり、今後も問題が起こる可能性はあるだろう。
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