こいし ゆうか「くらべて、けみして 校閲部の九重さん」
「くらべて、けみして 校閲部の九重さん」は新潮社の校閲部をモデルにした新頂社校閲部文芸班の社歴10年の九重心が主人公の漫画で、校正や校閲に興味があるので前から読んでみたいと思っていてやっと読むことができた。
出版物の誤字脱字をチックするのが校正ならば、校閲というのは使われている言葉や表現のそのものの正確さや的確さを見分け、調べて著者に確認する重要な役割をもつ出版社の影の立役者になる。
出版社は校閲者を社員として雇用していたり、外部の校閲者に依頼しているが、新潮社が社員の校閲者が70名を擁する日本一の校閲部を持っている出版社になる。
文芸書の校閲の話で、作家とのエピソードや校閲あるあるなど校閲者の日常を描いていて 、校閲者は多様な知識が必要で、いろいろな苦労があるということがこの漫画でよく分かるし、出版物ができるまでの流れも理解できる。
本などは1冊しか書いたことがないけれど、ちゃんとした校閲者に見てもらったことがあって、付箋がたくさん付いてきた。
誤字脱字はもちろんのこと、日本語の用法の間違いや誤用、分かりづらい表現、用語の統一などの指摘を受けて、ここまで詳細にチェックするのかと感心したことがある。
こんど第2巻がでるようなので読んでみなければ。
文芸書の場合は、校閲では内容にまで踏み込むことは滅多にないようだけれど、学術論文や学術書の場合には、いい加減な内容のものをだすことは信用問題になるので、専門家が内容のそのものまでを調べ確認しながら読む閲読というシステムを取っている。
閲読では、文章としての正確さはもちろん、仮説のたてかた、根拠となる引用文献の適否、手法の新規性・独創性、実験系の場合は実験方法、結論に至る分析方法など細部に至るまでチェックすることになる。
したがって、閲読者は相当な時間を取られるし、責任もある。ところが酷い閲読者が時折いて、適当に見て掲載可の判定をだすひと、同じ分野なので言いがかりをつけて出版を邪魔するひとなどがいて迷惑なこともある。
何事も間違いのないものを出すということが大切なのだろう。
| 固定リンク
コメント