アメリカ合衆国(アメリカ)のトランプ大統領が4月から世界中の国々からの輸入品に対して高率の関税をかけることを決めた。前にも書いたけれど、関税は輸入品を購入する消費者が払うものだから、国内で同じ商品製造していなければ、単純に考えれば商品価格は関税分だけ上昇することになる。
アメリカの国民は物価上昇によるひどいインフレに苦しむことになるだろう。
アメリカは第2時世界大戦後、農業以外の第一次産業を人件費の安い海外の国に依存するグローバル化を進めて、儲けの大きい金融と情報産業に切り替えて現在の状況を作り上げて来たはずだ。
アメリカは「国の信用の維持と増進」と「世界情勢に対して戦略的優勢を維持する」することで国民に豊かな生活を提供するために、世界の警察として多額の予算を費やして世界中に軍隊を送りグローバル化で海外で生産させた製品を輸入するために必要な安全な海上交通などの物流体制を構築してきたはずだ。
アメリカ国内の製造業にとって海外からの素材や部品がなくては生産できなくなっているし、日常生活に必須の生活消費財は国内生産はすくなく輸入なしでは供給できないはずだ。
それを度外視して、あたかもアメリカが被害者のように振る舞うのは、世界中が納得できないはずだ。
昨年、トランプが大統領に選出された頃にピーター・ゼイハンの「『世界の終わり』の地政学 (上・下)」を読んでいて、その中で世界で流通する資源、原料資材、製品がきたきつねが考えているほど単純ではなく非常に複雑な過程を経ていることが書かれていた。
また、その流通についてもアメリカのシーレーンの安全保障が大きな役割を果たしていて、アメリカがそこから撤退すると、物流が滞って大混乱になることが説明されていて、ゼイハンは本当に世界の終わりが近づくかもしれないことを警告している。
この本の読後、トランプ大統領の言動を見聞きすると悲観的にならざるを得ない心境になってきていたけれど、今回のなんの根拠も展望もない関税政策に至ってさらに世界の終わりが近づいてきたように思え、絶望してしまった。
ただ、数ヶ月を待たず生活が成り立たなくなって国民が悲鳴を上げは始めることになるだろうから、トランプ政権はその時どのような対応を取るのか知りたい。
もう一つの視点でも、アメリカの財務上の問題が浮上する可能性は否定できない。アメリカ国債発行残高は36兆2000億ドルと国内総生産(GDP)の120%超に相当していて借金でまみれの国で、日本のアメリカ国債残高は1兆0990億ドル、次にアメリカ国債残高の大きい中国は7686億ドルとなる。
トランプ大統領は中国を目の敵にして高率関税をかけることにしているけれど、中国は今年の年明けからアメリカ国債を一部売り始めているが、ありえないことかもしれないけれどもし反発してアメリカ国債と連邦政府機関(エージェンシー)債を大量に売却すれば、残高の比率は小さくてもドル金利が上昇し、ドルへの信認が低下する可能性があり、追従する国や銀行がでてくればアメリカはディフォールトする引き金になる可能性も出てくるので、トランプ政権との駆け引きに使われる可能性はあるかもしれない。
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