2025/06/12

川島明の辞書で呑む

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昨年からテレビ東京・BSテレ東で始まった深夜帯のバラエティー特番「川島明の辞書で呑む 」は、お笑い芸人を中心とした出演者が指定された最初の文字で始まる見聞きしたことのない言葉を国語辞典から探し出し、その言葉の意味をみんなで共有し、その言葉をツマミに語り合い、乾杯するという辞書バラエティーだ。

出演しているお笑い芸人の高学歴化が進んでいるので、話の展開が面白い。

使われている辞書は三省堂の「新明解国語辞典」と「三省堂国語辞典」の2冊で、同じ会社の辞書でも採用している語と語釈、例文など異なることも知ることができてよいだろう。

新明解国語辞典」は語釈や用例にも特徴があり、アクセント表示、文法解釈など学習辞書として評判が高い。

三省堂国語辞典」は発刊から60年を越える辞書で、改訂のたびに時代に即応した新しい語や項目を採用するの豊富な語を簡潔でやさしく説明しているところに評判がある。

ツマミにする言葉を探すには辞書を読まなければならないから、その中で言葉との出会いがあるはずで、この番組で辞書を読む人が出てくると良いと思う。

ネットで言葉や事象などを知ることが簡単にできるようになっているけれど、辞書を引いているときにのように隣接する言葉との出会いはないから、未知との遭遇や言葉の世界の広がりを得ることができないだろう。

小中学生の頃は辞書を使っていた人も、ネットに依存するようになっていたり、言葉について考えなくなってしまったりして日頃、辞書に触れることが無くなった人たちが関心を持ち始めてくれると嬉しい。

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2025/05/06

久しぶりにトランジスタ技術を見る

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30年以上前にはCQ出版社の「トランジスタ技術」と「インターフェース」を定期購読していた。

ディスクリートや簡単なICで測定器やセンサを手作りしていた時代は非常に参考になっていたが、どんどんIC化、マイコン化が高度化してきて理解できなくなってしまい購読を止めてしまった。

今回、Facebookの「大人の電子工作」グループで、USBについて非常に良い資料だということで、バックナンバーを購入してみた。

前半の部分はほとんど使うことのない内容だったのでスルーした。後半の「保存版 サッと調べるUSB便利事典」は、コネクタとケーブルに関するピン接続、コネクターのUSBバージョンによる違いは進化するUSBの接続方法を理解するのに有用だった。

これから普及するUSB4.0の通信規格、Type Cの電源規格のまとめもこれから出会いそうな問題がある程度理解できた。

どんどんパソコン、スマホなどの通信規格や電源規格などが変わってくるけれど、老化した頭では消化しきれなくなりそうだ。

付録の「いまさら聞けない回路図の描き方の作法【部品記号図鑑付き】」は、部品の図鑑がついているので便利かもしれない。とはいえ、手先が震えて細かなはんだ付けが難しくなってしまったので、もう見るだけ!

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2025/03/10

こいし ゆうか「くらべて、けみして 校閲部の九重さん」

20250310_10くらべて、けみして 校閲部の九重さん」は新潮社の校閲部をモデルにした新頂社校閲部文芸班の社歴10年の九重心が主人公の漫画で、校正や校閲に興味があるので前から読んでみたいと思っていてやっと読むことができた。

出版物の誤字脱字をチックするのが校正ならば、校閲というのは使われている言葉や表現のそのものの正確さや的確さを見分け、調べて著者に確認する重要な役割をもつ出版社の影の立役者になる。

出版社は校閲者を社員として雇用していたり、外部の校閲者に依頼しているが、新潮社が社員の校閲者が70名を擁する日本一の校閲部を持っている出版社になる。

文芸書の校閲の話で、作家とのエピソードや校閲あるあるなど校閲者の日常を描いていて 、校閲者は多様な知識が必要で、いろいろな苦労があるということがこの漫画でよく分かるし、出版物ができるまでの流れも理解できる。

本などは1冊しか書いたことがないけれど、ちゃんとした校閲者に見てもらったことがあって、付箋がたくさん付いてきた。

誤字脱字はもちろんのこと、日本語の用法の間違いや誤用、分かりづらい表現、用語の統一などの指摘を受けて、ここまで詳細にチェックするのかと感心したことがある。

こんど第2巻がでるようなので読んでみなければ。

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2025/02/03

本川達雄:ウマは走るヒトはコケる

20250203_2 国立科学博物館の特別展「鳥」を見に行った時に、本川達雄「ウマは走るヒトはコケる-歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学」(中公新書)を読んでおいて良かったと思った。

本川先生は「ゾウの時間ネズミの時間」で哺乳動物の寿命が総心拍数に関連するというユニークな内容の本だったけれど、この本も脊椎動物の走る、歩く、飛ぶという運動を工学的視点を加えて分かりやすく解説したユニークな本だ。

哺乳類と爬虫類、四足歩行と二足歩行などの特徴、骨格との関係にヤング率とか、運動にエネルギー保存法則とか魚の動きに流体力学といった工学的な視点からの説明は、理系の人間には分かりやすいだけでなく、非常に分かりやすい説明で生物系の人間にも理解できるだろう。

特に、バードウォッチャーが知っておくべき、鳥が飛ぶことに特化するために取り入れた体の構造、呼吸、排泄、繁殖など生理的な機能などや飛行について詳しく説明されていて、バードウォッチャーに取っても非常に参考になる内容となっている。

目次を見ただけで読む価値が分かるだろう。

「鳥」展では「鳥のひみつ」のコーナーでも解説と重なっている部分があるし、我孫子市の鳥の博物館にも解説があるけれど、一般向けでかつ断片的な説明になっているのと違いより系統的でかつ具体的になっている。

きたきつねは学生時代、鶏の飼育環境について勉強したことがあって、養鶏場の片隅を借りて実験をさせてもらっていたことがあった。その時にブロイラーの解体を手伝わせて貰うことがあったので、鳥の体については結構知っていると思っていたけれど、誤認の修正も含めきちんと記憶が整理できた。

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2024/08/08

とりのなん子:とりぱん(33)

20240808_2 COVID-19感染症で臥せっている時に「とりぱん」の最新号の33巻が届いていた。

2005年に漫画雑誌「モーニング」で連載が始まっているから、野鳥のバードフィーダーの話で19年も良く続いていると思う。

最初の頃から、動物の擬人化はいいこととしても、野鳥の絵が適当すぎるのは気になっていたが、漫画としてディフォルメするにしてもある程度の正確さが必要だと思ってきた。

毎号どこかに???というところがあったのだけれど、給餌の話だからと我慢してきた。今号でも90ページのジョウビタキ♂の絵を見てがっかり、どう見てもクロジョウビタキじゃないか。

編集者は自然について分からないにしても、ちょっと分かった人に見てもらっていないのだろうかと思っていた。

監修者はないにしても、作者は19年も鳥を見ていて双眼鏡や図鑑類を持っていないようで、双眼鏡を使って図鑑を見ていればもう少し、野鳥の表現が良くなるような気がしていた。

やはり鳥が好きという作者とバードウォッチャーの求めるものが違うのは仕方がないようだ。

最新刊が出る度に惰性で買っていたが、最新号を見ていてそろそろ止める潮時なのかな。

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2024/06/03

齋藤 孝「定義」

20240603_2「定義」の著者、明治大学文学部教授の教育学者の齋藤 孝さんは、教育論の著書だけでなくビジネス書、コミュニケーションを基礎とした関連書籍をたくさん書いていて、興味のあることを上手くまとめているようだ。

この本「定義」は、歴史上の有名人が話したり、書いたりしたそのひとの考える言葉や事象の定義をおおよそ300項目集めたもので、それぞれの定義について著者の考えを述べる形のエッセイ集になっている。

ひとそれぞれに興味がある分野があって、十人十色の定義があるのだけれど、定義の項目の選び方を見ていると、著者は、人間、人生、社会、教育といったことばについて強い興味があって、神とか信仰や自然についてはあまり興味がないようだ。

岡本太郎の「芸術は爆発だ」といったものは入っていないけれど、探せばいくらでも出てくるだろう。

「国語辞典」の「定義とは概念の内容や用語の意味を明確に限定すること。また、その意味、内容」ということで何かを規定したり、基準となるものなのだけれど、この本のように個人的なものであれば辞書の語釈と違い普遍性をもつ必要はないから自由で良いのだろう。

著者が勧めているように興味のあることについて、自分の定義を考えるのも面白いかもしれない。

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2024/04/30

池内 了:江戸の好奇心 花ひらく「科学」

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きたきつねが好きなジャンルの本で、「江戸の好奇心 花ひらく『科学』」というタイトルのジャケ買いしてしまった。

江戸時代は、暇な武士だけでなく、庶民までが色々な科学を楽しんでいたけれど、あくまでも趣味の域を出ずに、技術として何か実用化すること目的にしていなかったというのが興味深い。

関孝和の和算、平賀源内の本草学からの博物学、田中久重(からくり儀右衛門)のからくりなどの有名人だけでなく、大名から庶民まで朝顔や菊などの園芸品種の改良やネズミや金魚の品種改良、自在金物など色々なものに好奇心一杯で取り組んできていたことを取り上げている。

江戸の寺子屋による読み書き算盤の教育の背景もあっただろうけれど、それ以上に高度な科学に庶民が取り組むことができるくらい自由な精神があったのだろう。

江戸時代の知への好奇心と知の集積があったからこそ、明治維新後の海外からの知識や技術の吸収・応用、戦後の技術立国にもつながってきたのだろうと思う。

茨城県でも土浦で傘式の地球儀を作成した沼尻墨僊やつくば市谷田部で五角堂や和時計を作った飯塚伊賀七などのように各地に好奇心いっぱいで科学を楽しんでいた人々がいたはずだ。

日本人のもつ好奇心は、江戸以前にも縄文式土器、巨大古墳、戦国時代の鉄砲生産でも発揮されていたのではと思ってしまう。

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2024/04/24

矢部 太郎:プレゼントでできている

20240424_5 「プレゼントでできている」は矢部太郎の3年ぶりのコミックエッセイで、週刊新潮に2023年1月から6月まで連載された「プレゼントと僕」をコミックスにしたものだ。

前作の「大家さんと僕」、「大家さんと僕 これから」などとと同じように、下手なのか上手いのか分からないほんわかとしたキャラクターがまったく疑うことなく暮らし、仕事をし、何かをもらうことがが描かれている。

色々なものや言葉をもらう主人公は、なにかをもらうことは、きっと、何かをあげることにつながっていくことだと思うったのだろう。

心が汚くなってしまったきたきつねはもう過去に後戻りできないけれど、作者から何かをもらったので、どこかで何かを誰かにあげようと思う。

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2024/04/17

内田正男:暦のはなし十二ヶ月 第三版

Koyomi_12 きたきつねは暦に興味があって、特に昔の出来事や伝統行事の季節感は新暦では違和感があって、旧暦が良いと思っている。

暦について分かりやすい本を探していたら、ちょっと古い本だけれど内田正男さんの「暦のはなし十二ヶ月 第三版」を見つけた。

暦の歴史から、新暦、旧暦、二十四節気、七十二候などの説明、歴史的な出来事や短歌や俳句の季節感、日本や太陽暦での毎月の名前や日数、大安や仏滅が意外と新しく使われるようになっているけれど根拠がないことなど、非常に分かりやすく書かれていて、読んで良かった。

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2024/03/22

坂上暁仁:神田ごくら町職人ばなし(一)

20240322_2 きたきつねは昔職人に憧れていて、成れなかったけれど職人の話は好きで、本やテレビにモノづくりが扱われていると見てしまう。

漫画「神田ごくら町職人ばなし」は雑誌連載は知らなかったけれど、ひょんなことから見つけて入手した。人気で増刷が続いているようだ。

江戸の町を舞台に桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官の五つの仕事を扱っていて、黙々と手を動かしものを作る職人の姿を描いている。

畳刺し以外は全て女性の職人が主人公という、江戸時代を背景とすればちょっと珍しいのかなという印象があるけれど、仕事への向き合う真摯な姿勢が描かれている。

ストーリーは見どころがしっかりあるのはもちろん、それ以上に職人の扱うそれぞれの仕事のプロセスがきちんと描かれているのも嬉しい。

職人を扱った漫画としては三十年近く前に村野守美「職人尽百景」三巻があるけれど、「神田ごくら町職人ばなし」劇画調の職人の厳しさを表現しているが、こちらはコミック風で人情話になっている。

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